確定拠出年金の投資で利益が出ている場合、利益確定しておくべきか?
世界的な株高や、歴史的な円安もあり、確定拠出年金で投資信託を使って世界の株式等に投資している人は、かなり利益が出ているのではないかと思います。利益が出てくると、誰しも考えてしまうのが、一度売却して利益確定しておいた方がよいのでは?ということです。
今回は、企業型DC(確定拠出年金)やiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)といった確定拠出年金で運用しているお金について、運用の途中で利益確定しておくべきかどうかについてご説明します。
売却して利益確定すべきではない
結論から言うと、確定拠出年金で運用しているお金は、途中で含み益が大きくなったとしても利益確定するべきではない、と考えています。
企業型DCでも、iDeCoでも、確定拠出年金のお金を引き出して使うことができるのは60歳以降です。引き出して使えるようになる前に、一度売却して利益確定したところで、そのお金はどうするのでしょうか。
売却したとしても確定拠出年金口座の中に置き続けるしかありませんので、選択肢としては元本確保型の預金や保険、もしくは投資商品である投資信託のいずれかに再投資することになります。これを『スイッチング』と言います。
例えば、利益確定して、いったん元本確保型の預金や保険にした場合を考えてみましょう。その後、いつ投資を再開するのでしょうか。値下がりしたタイミングを見計らって、再度投資すればよいと考えるかもしれませんが、そういったタイミングを読むのは至難の技です(そもそもそういったことができるなら、確定拠出年金口座に限らず、NISA口座や特定口座でも同様の投資をすれば大きな利益が得られるはずです)。また、十分に上昇したから利益確定ということかもしれませんが、その後も上昇し続ける可能性もあり、そうなるとせっかくの収益機会を逃してしまうことになります。
さらには、利益確定して元本確保型の商品に置いたとしても、そのことを忘れてしまって、そのまま60歳以降で受け取る時まで運用されなくなってしまうリスクも考えられます。そうなってしまっては、せっかくの運用機会を失ってしまうことになります。
60歳に受け取る予定で、もうすぐ60歳という場合は?
60歳までの運用期間がある程度長く取れる場合には、利益確定せず、投資した状態を維持し続けたほうがよいと考えていますが、例外と言えるのは、60歳を目前に控え、もうすぐ受け取る予定という場合です。ライフプランを考えて、60歳の時点で確実に受け取る予定になっており、現在50代後半という場合には、少しずつ利益確定していくことも選択肢になると考えています。
というのも、60歳での受け取りを目前にして、マーケットの大暴落が発生してしまうと、売却して受け取るのが難しくなってしまうからです。60歳での受け取りを先送りして、マーケットが回復するまで待つことができる、つまり60歳からの生活費を別途確保できるのであればいいのですが、確定拠出年金のお金を60歳以降の生活費として使っていく予定にしていた場合は、予定通りのタイミングで受け取ることができないと困ってしまいます。
こういったリスクを考えると、受け取りを目前に控えている場合には、60歳の数年前から少しずつ売却していき、元本確保型の預金等に変えていくのも選択肢になるでしょう。なお、少しずつ売却するというのは、掛金を拠出する時に定時定額(ドルコスト平均法)で行ってきたように、売却のときも一括ではなく、時間分散できるよう、何度かに分けて売却していくことで安値売りのリスクを低減できると考えているからです。たまたま高値で売却できればよいのですが、それはなかなか難しいことですので、何度かに分けて、平均的な価格で売却できれば十分でしょう。
確定拠出年金のお金は60歳まで引き出せないことを考えると、途中で利益確定などせず、収益性の高い商品を中心に、できるだけ投資し続けるのがよいのではないでしょうか。