いよいよ2024年12月から公務員のiDeCo掛金上限金額が引き上げに~今年は5年に一度の財政検証、さらなるiDeCo改革へ~
老後に向けた資産形成制度の代表格であるiDeCo(個人型確定拠出年金)は、加入者数の拡大が続いており、2021年3月末の約193万人から2024年1月末には約320万人と、3年足らずで130万人近く増えています。そして、約64万人と加入者全体の2割を占めているのが公務員(共済組合加入者)です。
今回は、2024年12月から引き上げられる公務員のiDeCo掛金の上限金額と、今年予定されているiDeCo制度の改革について説明します。
2024年12月から引き上げられる公務員の掛金上限
iDeCoは2001年の確定拠出年金制度の導入以降、さまざまな改革が行われてきました。そして、2024年12月1日に施行されるのが「企業年金に加入する者のiDeCoの拠出限度額の見直し」です。公務員も含めて、企業型確定拠出年金や確定給付企業年金といった企業年金に加入している人がiDeCoに加入した場合の掛金拠出限度額のルールが変更されます。
具体的には、次の表のように共通のルールで運営されるようになります。
国民年金 第2号被保険者 | これまで | 2024年12月1日以降 |
---|---|---|
(1)企業型DCのみ に加入 | 月額5.5万円 – 各月の企業型DCの事業主掛金額 ※月額2万円を上限 | 月額5.5万円 – (各月の企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額) ※月額2万円を上限 |
(2)企業型DCと、DB等 の他制度に加入 | 月額2.75万円 – 各月の企業型DCの事業主掛金額 ※月額1.2万円を上限 | |
(3)DB等の他制度のみに 加入(公務員を含む) | 月額1.2万円 |
出所:厚生労働省ホームページより、筆者作成(赤字・太字は筆者による)
公務員の場合、上の表(3)にあるように、これまでは一律で月額1.2万円でしたが、2024年12月以降は、
※月額2万円を上限
となります。
公務員に企業型DC(確定拠出年金)はありませんが、DB等の他制度として「年金払い退職給付」という制度があります。つまり、「年金払い退職給付」の掛金が月額3.5万円を超えてくると、上の式に従って計算された金額がiDeCoの掛金上限になるのです。
ただし、「年金払い退職給付」の保険料率上限は1.5%と定められているため、逆算すると年収2,800万円を超えない限りは影響がないことになります。つまり、公務員のiDeCoの掛金上限金額はほとんどの方が月額2万円になるといえます。つまり、1.2万円から8千円増額される形になります。
公務員で老後資金をさらに充実させていきたい方は、iDeCoの利用や拠出する掛金の引き上げを検討されるとよいでしょう。
iDeCoの改革は今後も続く
2001年から開始されたiDeCoですが、より容易にかつ幅広く活用されるよう、今後も改革していくことが2022年11月に決定された「資産所得倍増プラン」で説明されています。具体的には次の3点になります。
- iDeCo の加入可能年齢の引上げ
- iDeCo の拠出限度額の引上げ及び受給開始年齢の上限の引上げ
- iDeCo の手続きの簡素化
このうち1と2は、2024年の財政検証に併せて行うとされています。ここで財政検証とは公的年金財政についての定期健康診断にあたるもので、今後の少子高齢化や平均寿命の伸びなどを考慮し、給付と負担のバランスがとれているかを確認、今後の財政収支の見通しを作成していくプロセスです。財政検証は5年に一度行われており、2024年はまさにその年になります。
iDeCo改革の具体的な内容は、厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会企業年金・個人年金部会で議論され、結論を出していく形になります。
iDeCoの制度は、退職所得に対する税制等も含め、今後も変化していく可能性が高い状況にあります。詳細について逐一追いかける必要はありませんが、大きな制度変更には留意しつつ、老後資金準備として有効活用していくとよいでしょう。
最後に
今回は、主に、2024年12月に変更となる公務員のiDeCo掛金上限の引き上げについて説明しました。iDeCoは、公務員に限らず、個人事業主や会社員など幅広い方が利用できる制度です。基本的に老後資金準備のための制度となりますが、2024年から大幅にリニューアルされたNISA(少額投資非課税制度)とも併用しながら長期的な資産形成に活用していくとよいでしょう。