日本銀行の利上げは資産運用や住宅ローンへどのような影響があるのか?
日本銀行は2024年3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除、利上げの方向に転換しました。これまでのゼロ金利とは異なり、すでに金利のある時代に突入しています。今回は日銀の利上げが家計の資産運用や住宅ローンにどのような影響があるのかについてご説明します。
そもそも日銀による利上げとは?
日本銀行は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ために、金融政策の決定と実行を行っています。具体的には、消費者物価の前年比上昇率2%を物価安定の目標として定め、それを実現していくために政策金利の変更などを行っているのです。
日本の中央銀行である日本銀行は「銀行の銀行」と呼ばれますが、政策金利を変化させることによって民間の銀行に影響を与え、結果として企業や個人の活動に影響を及ぼしていくのです。
本記事では、生活者としての個人に与える影響として、資産運用や住宅ローンを中心にご説明していきます。
預金、債券、株式といった資産運用への影響は?
資産運用で購入する代表的な金融商品として預金、債券、株式がありますが、これらの運用利回りに対する利上げの影響を確認していきましょう。
まず預金です。日銀が利上げすると民間銀行の預金金利も上昇しますので、これまではほとんど利子がつかなかった預金に利子がつくようになり、資産運用の観点ではプラスの影響があると言えます。実際、マイナス金利が解除される前の普通預金金利は0.001%程度でしたが、直近(2025年6月)では0.2%程度まで上昇しています。
債券は年限にもよりますが、基本的には金利が上昇しますので、これから新規で購入される方にとっては利回りが改善し、プラスの影響と言えます。一方、すでに債券を購入して保有している人にとっては、利回りが上昇することで債券価格が下落しますのでマイナスの影響となります。ただ、満期まで保有を継続していけば、基本的には購入時の条件通りクーポンと元本を受け取っていけます。
株式は、基本的にマイナスの影響があると言えます。株式を発行している企業は銀行などから借り入れをしたり、債券を発行したりして資金を調達していますから、利上げにより金利が上昇することは、その調達コストが上昇することを意味します。そうなると、利上げ後はそれまでよりも利益を生み出しづらくなりますので、利益の減少が見込まれ、株価は下落する方向に動くと言われています。ただし、株価は金利以外にもさまざまな影響を受けて変動しますので、その点には注意が必要です。
資産運用の最後に、株式や債券を対象として投資している投資信託への影響を考えてみましょう。こういった投資信託を保有している場合は、利上げされると株価、債券価格ともに下落する可能性が高く、結果として投資信託の基準価額へもマイナスの影響があると言えます。ただし、日銀の利上げが直接的に影響を与えるのは日本株式や日本債券です。日本以外の外国資産については、それぞれの中央銀行の金融政策の影響を受けますので、各国の経済状況によって状況は異なっています。
家計の代表的な負債、住宅ローンへの影響は?
住宅ローンは一般的に半年に1回金利が見直される変動金利と、一定期間は金利が変わらない固定金利があります。日銀が利上げすると、各金融機関は変動金利の指標として採用している短期プライムレートを上げるため、変動金利の住宅ローンを借りている人は返済額が上昇する、つまりマイナスの影響があります。
一方、固定金利で住宅ローンを借りている人は、その固定期間によって影響の受け方は異なりますが、例えば、5年固定であれば、少なくとも5年間は借入金利が変動しないため、返済額も変化しません。つまり、当面の影響はないと言えます。しかし、固定期間終了後は、金利が上昇することになりますので、返済額が上昇、マイナスの影響となります。
住宅ローン以外にも、自動車ローン、教育ローンといった負債(借入金)は、金利が上昇すると返済額が上昇していきますので、マイナスの影響があると言えます。
利上げにより、マイホームなどの不動産価格はどうなる?
これからマイホームを購入しようとされている方にとって気になるのは不動産価格でしょう。一般的に金利が上昇すると、不動産価格は下落します。
マイホームを購入する場合、住宅ローンを借りて購入する方がほとんどです。例えば、住宅ローンを金利0.5%、借入期間35年で5,000万円借りた場合、毎月の返済額は129,792円となります。しかし、金利が1.5%に上昇した場合、毎月の返済額は153,092円へと23,300円も上昇します。
ここで、金利が1.5%に上昇した場合に、毎月の返済額を129,792円におさえたい場合、他の条件が同じであれば、借入額は約4,239万円に抑える必要があります。5,000万円と比べて借入額は761万円下がりますので、同じ価格の不動産を購入するためには手元資金から追加で761万円を出す必要があるのです。手元資金がない場合はマイホームの予算を下げようとなりますから、不動産の買い手が減少することになり、不動産価格は下落することになるのです。
最後に
日本銀行の金融政策はこれまでゼロ金利、マイナス金利ということで、長い間金利は下がるのが当たり前でした。しかし、2024年3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除、利上げの方向に転換したことによりゼロ金利は過去のものとなり、金利のある時代に突入しています。
家計にとって利上げはプラスに働くこともあればマイナスに働くこともあり、一概には言えませんが、ご自身の資産や負債が利上げの影響をどのように受けるか確認し、必要に応じて資産の組み換えやローンの借換えなど、対応していくようにしましょう。