高齢期の資産取り崩しに向いている?毎月分配型投資信託の注意点
自民党の資産運用立国議員連盟が「資産運用立国2.0に向けた提言」を4月に石破首相に提出、その中に含まれている「プラチナNISA」が話題になっています。「プラチナNISA」は2024年から開始された新しいNISAについて、高齢者に限定して対象商品の拡大・スイッチング解禁を図るものとされています。
対象商品の拡大で特に注目されているのがいわゆる毎月分配型投資信託で、年金で生活する高齢者の収入を補うものとして高齢期の資産運用でニーズが高いものです。今回は毎月分配型投資信託の注意点についてご説明します。
毎月分配型・隔月分配型投資信託とは?
投資信託は、株式や債券などのさまざまな資産に投資を行い、その収益から投資家に分配金を支払います。分配金を支払う頻度は投資信託の決算頻度に応じて決まり、年1回決算のものから、毎月決算、隔月決算のように決算頻度の高いものもあります。中でも、毎月決算を行い、毎月分配金を支払う可能性があるタイプの投資信託は毎月分配型投資信託と呼ばれ、分配金収入(インカムゲイン)を求める投資家に人気があります。
ただ2024年から開始された新しいNISAでは、毎月分配型投資信託は長期的な資産形成に適していないということで対象商品から除外されております。代わりにNISA対象条件を満たすために毎月ではなく、2ヶ月に1回決算を行って分配金を支払う隔月分配型投資信託も登場してきています。
投資信託の分配金とは?
分配金は投資信託の決算が行われる際に、運用して得た収益を投資家に分配するものです。分配金は投資信託の信託財産から支払われるため、分配金が支払われるとその金額だけ投資信託の純資産総額(運用残高)は減少、投資信託の値段である基準価額も低下します。
分配金は決算の度に必ず支払われるとは限らず、投資信託の分配方針や決算の内容によって支払われるかどうかその都度運用会社が判断して決定しています。
また投資信託の分配金は「普通分配金」と「特別分配金(元本払戻金)」の2種類があります。一般的に投資信託の投資家(受益者)は多数いて、投資家ごとにその取得価額(個別元本と呼ばれます)は異なります。分配金が支払われると分配金の額だけ基準価額は低下しますが、分配落ち後の基準価額が個別元本を上回っていればその分配金は純粋に収益の一部を分配する普通分配金、分配落ち後の基準価額が個別元本を下回った場合はその下回った金額が特別分配金(元本払戻金)となります。特別分配金は収益の一部を分配するものではなく投資元本を投資家に払い戻す「タコ足分配」になりますので税制上は非課税、一方、普通分配金は課税対象となります。
毎月分配型・隔月分配型投資信託の注意点
年金収入に頼る高齢者にとっては、毎月や隔月など定期的な収入が得られる毎月分配型投資信託や隔月分配型投資信託が人気です。しかし、こういった投資信託の場合、普通分配金のみならず、特別分配金(元本払戻金)が支払われる形になることも多く、その場合は単純に投資元本を投資家に払い戻しているだけということになります。
高齢期で資産取り崩しを目的としてこういった投資信託を利用しているのであれば必ずしも問題ではありませんが、資産形成期においては効率的に複利の効果を活かせない形となりますので注意が必要です。
また一般的に毎月分配型・隔月分配型の投資信託では運用コストの大部分を占める運用管理費用(信託報酬)が高めに設定されていることが多く、長期投資では運用管理費用(信託報酬)がリターンに直結しますので、しっかりと確認しておくことが大切です。
投資信託の投資対象資産を理解しておくことが大切
毎月分配型や隔月分配型の投資信託は高頻度で分配金が支払われることに目が行きがちですが、そもそもしっかりと収益を生み出す株式や債券などに投資をして分配金の原資となる収益を上げなければ、継続的に分配金を支払うことはできません。
つまり、その投資信託がどんな資産を対象にどのような投資方針で運用されているのかをしっかりと確認して理解しておくことが大切です。少なくとも運用実績を確認して実際にどのくらいのリターンを生み出し、どのように分配金が支払われてきたか確認しておきましょう。そして、さらに重要なことは今後もしっかりと運用され、同様にリターンを生み続け、分配金を払い続けることができそうかということです。
最後に
年金生活を送る高齢期の資産活用期・資産取崩期においては毎月分配型や隔月分配型の投資信託を組み入れていくことも選択肢になるでしょう。しかし、毎月分配型や隔月分配型の投資信託と一言で言っても日本国内で1,000本近くの投資信託が販売されており、これだけの投資信託の中から適切な商品を選択するのは容易ではありません。
一方、資産を取り崩していくなら、必ずしも分配金の形で受け取らなくても、一部の金融機関で提供している定期売却サービスなどを活用することで、ご自身のライフプランに応じて必要なキャッシュフローを確保していくことも可能です。
投資信託の商品選びの前に、ライフプラン・ファイナンシャルプランをしっかりと作成、その上で適切な商品・サービスを選択していただければと思います。